不倫慰謝料の示談書と公正証書の違いとは?作成前に知っておきたいポイント
不倫問題に区切りをつけるため、示談書や公正証書の作成を考える方も多いでしょう。
もっとも、内容をよく理解しないまま進めてしまうと、後から不利な立場に置かれたり、慰謝料の回収に苦労したりするおそれもあります。示談書と公正証書にはそれぞれ特徴があり、状況に応じた使い分けが重要です。本記事では、不倫慰謝料を請求する側の視点から、示談書と公正証書の違いや注意点、弁護士に依頼するメリットまで、整理して解説します。
1.示談書とは
示談書とは、当事者同士の話し合いによって合意した内容を書面にまとめたものです。裁判や調停をせずに
話し合いで問題を解決する場合、その合意内容を明確に残すために作成されます。
示談書は、合意書、和解書、和解契約書等と呼ばれることもあります。 不倫慰謝料の場面では、慰謝料の金額や支払方法、支払期限などを定めるのが一般的です。示談書自体は当事者が自由に作成できますが、内容が不十分だと、後日「言った・言わない」の争いになるリスクがあるでしょう。
1-1. 示談書作成の流れ
一般的には、次のような流れで示談書は作成されます。
①慰謝料の金額や支払方法、支払期限などについて話し合う
②今後の接触禁止や口外禁止など、付随する条件を確認する
③合意内容をもとに示談書の案を作成する
④内容に誤りや抜けがないかを確認し、必要に応じて修正する
⑤双方が納得したうえで、示談書に署名・押印を行う
このように、示談書は「話し合い→書面化→確認→署名押印」という段階を経て完成します。
なお、示談書は当事者同士で作成することもできますが、内容が不十分だと後のトラブルにつながるおそれがあります。合意内容を確実に残したい場合には、弁護士等の専門家の確認を受けると安心でしょう。
1-2. 示談書に書かれる内容
示談書には、合意した条件をできるだけ具体的に記載します。不倫慰謝料に関する示談書では、次のような項目が盛り込まれるのが一般的です。
・慰謝料の金額
・支払期限、支払方法(一括か分割か)
・分割払いの場合の回数、支払日、振込先
・支払いが遅れた場合の対応(遅延損害金など)
・今後不倫をした者同士の接触禁止の約束
・第三者に不倫の事実や示談内容を口外しないこと
・示談書内の約束を破った場合の対応(違約金など)
・本示談をもって、これ以上の請求をしないことの確認
・示談書作成日
・当事者双方の氏名・住所・押印
これらを明確に書いておくことで、「言った・言わない」といった争いを防ぎやすくなります。 特に、慰謝料の支払い条件や接触禁止条項は、不倫問題の再発防止や精神的な安心につながる重要なポイントといえるでしょう。
2.公正証書とは
公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公的な文書です。当事者の合意内容を、公証人が法律に基づいて確認し、正式な文書として作成します。
特に、金銭の支払いを定める場合には強制執行認諾文言を入れることで、支払いが滞った際に裁判を経ずに強制執行が可能となります。強制執行認諾文言は、公正証書でしか入れることが出来ません。
2-1.強制執行認諾文言とは
公正証書で取り決めた金銭の支払いが行われなかった場合には、裁判を経ずに直ちに強制執行を受けても異議はないという趣旨の文言です。
強制執行認諾文言は、示談書に入れることは出来ず、公証人が作成した公正証書にのみ入れることが出来ます。
例えば、以下のような文言です。
「第●条(強制執行認諾):甲は、第〇条の債務の履行を遅滞したときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。」(引用:法務省HP )
強制執行認諾文言がない示談書を作成した場合、相手方の支払いが滞ると、必ず裁判所での手続きを経て強制執行をする流れとなります。そのため、あらかじめ公正証書を作成し、強制執行認諾文言を入れておくと、後々の手間が少なくなるメリットがあるでしょう。 また、強制執行認諾文言を入れることで、「支払いが遅れたら強制執行されてしまう」と、相手方へ心理的なプレッシャーが加わり、遅れずに支払う可能性が高くなる効果も考えられます。
2-2.公証人とは
公証人は、国家公務員ではありませんが、国の権限に基づいて公証業務を行う立場にあり、実質的には公的な役割を担う存在です。契約や合意内容を公正証書として作成し、法律上の証拠力を持たせる役割を果たします。
公証人は、裁判官・検察官・弁護士などとして長年法律実務に携わってきた人の中から、公募と審査を経て、法務大臣により任命されます。また、法曹資格は持たないものの、長年法務に関わり、高度な知識と経験を有すると認められた人が任命される場合もあります。
このように、公証人は高い法律知識と実務経験を前提として選ばれており、公正証書の内容に信頼性を与える重要な役割を担っています。 (参考:日本公証人連合会HP)
2-3.公正証書作成の流れ
一般的な公正証書作成の流れは、次のとおりです。
①当事者間で、慰謝料の金額や支払方法などの条件を合意する
②合意内容をもとに、公正証書に記載する内容を整理する
③公証役場に連絡し、必要書類や予約日時を確認する
④当日、公証役場で公証人による内容確認を受ける
⑤問題がなければ、公正証書に署名・押印を行う
公正証書は、必ず当事者双方(もしくはその代理人)が作成日当日に公証役場へ行き手続きを受ける必要があります。
直前に予約を入れようとすると、公正証書の空きがなかったり、双方の予定が合わない恐れがありますので、余裕をもって準備を進めることが望ましいです。
3.示談書と公正証書それぞれのメリット・デメリット
示談書と公正証書はそれぞれ性質が異なりますので、希望と状況に応じて使い分けましょう。
ここでは、それぞれのメリットとデメリットを解説します。
3-1.示談書を作成するメリット・デメリット
<メリット>
・当事者間の合意内容を書面として明確に残せる
・口約束に比べ、後日の認識の食い違いを防ぎやすい
・公証役場を利用せずに作成でき、手続が比較的簡単
・費用を抑えながら早期解決を目指しやすい
・接触禁止や口外禁止などの条件を整理できる
<デメリット>
・公正証書と比べると証拠力は弱く、内容を争われる可能性がある
・強制執行力がないため、慰謝料が支払われない場合は裁判が必要になる
・当事者同士で作成するため、交渉力の差が結果に影響しやすい
3-2.公正証書を作成するメリット・デメリット
<メリット>
・公証人が作成する公文書であり、証拠力が非常に高い
・合意内容を後から争われにくい
・強制執行認諾文言を入れることが出来、未払い時に裁判なしで強制執行が可能
・原本が公証役場に保管され、紛失や改ざんの心配が少ない
・示談書と同じように接触禁止や口外禁止などの条件も入れられる
<デメリット>
・公証役場での手続が必要となり、手間と時間がかかる
・作成内容に応じて手数料が発生する
・原則として双方の合意と出頭が必要なため、相手が協力しない場合は作成できない
・内容が公的文書として残るため、後から柔軟な変更がしにくい
4.示談書や公正証書作成における注意点
4-1.公正証書の費用は誰が負担するのか
公正証書を作成する際にかかる費用については、法律で負担者が定められていないため、当事者間の合意によって決めることになります。
実務上は、慰謝料を支払う側が公正証書の費用を負担するケースが多く見られます。これは、「支払義務を負っている側が、その履行を担保する目的で公正証書を作成する」という考え方に基づくものです。
もっとも、片方が全額負担しなければならないわけではありません。公正証書の作成が双方にとってメリットになる場合には、費用を折半する、あるいは一定割合で分担するといった取り決めがされることもあります。
いずれにしても、費用負担については事前に明確にしておくことで、より安心して手続きを進めることができるでしょう。
4-2.示談書を作成後に公正証書にできるのか
既に示談書を作成している場合でも、その内容を元に公正証書を作成することは可能です。実務上も、示談書で合意したあと、支払いの確実性を高める目的で公正証書を作成するケースは多く見られます。
ただし、示談書をそのまま公正証書に転用できるわけではありません。示談内容を整理したうえで、公証人の確認を受け、公正証書として作り直す必要があります。内容に不備がある場合には、公証人から修正を求められることもあります。 また、公正証書の作成には原則として双方の合意が必要です。
スムーズに進めるためにも、内容に不安がある場合は、事前に専門家へ相談しておくと安心でしょう。
4-3. 一度締結した示談書や公正証書は、原則として撤回できない
示談書や公正証書は、当事者が合意した内容を最終的に確定させるための文書です。そのため、一度締結すると、原則として一方的に撤回することはできません。「やはり納得できない」といった理由だけでは、文書をなかったことにするのは難しいとされています。
不倫慰謝料の示談書では、「今後一切の請求をしない」といった清算条項が盛り込まれることも多く、署名・押印をすると、追加請求ができなくなる点に注意が必要です。
例外として、詐欺や強迫があった場合などには無効や取消しが問題となることもありますが、認められるハードルは高いのが実情です。
示談書に署名する前に内容を十分確認し、不安があれば弁護士に相談してから進めることが重要でしょう。
5.示談書・公正証書作成を弁護士に頼むメリット
示談書や公正証書は、一度作成すると内容を簡単に変更できません。だからこそ、作成段階で弁護士が関与することが、将来の安心につながります。
5-1.法的に有効で不利になりにくい内容に整えてもらえる
示談書や公正証書は、書き方ひとつで法的な評価が大きく変わります。慰謝料額や支払期限の定め方、清算条項の入れ方によっては、後から追加請求ができなくなったり、逆に相手に有利な解釈をされてしまうこともあります。
弁護士に依頼すれば、請求する側の立場を踏まえ、不利にならない表現かどうかを専門的に確認したうえで文案を作成してもらえるため、安心です。
5-2.支払いが滞った場合まで想定した内容にできる
慰謝料は、合意しただけでは実際に支払われないケースもあります。分割払いにした結果、途中で支払いが止まることも珍しくありません。 弁護士が関与すれば、公正証書にすべきかどうか、強制執行認諾文言を入れるべきかなど、将来の回収まで見据えた設計が可能になります。
5-3.相手と直接会わずに手続きを進められる
不倫慰謝料の話し合いでは、相手と顔を合わせること自体が強いストレスになる方も多いでしょう。
弁護士に依頼すれば、交渉や連絡の窓口はすべて弁護士が担当します。不倫相手や配偶者と直接会ったり、感情的なやり取りを続けたりする必要はありません。精神的な負担を抑えながら、冷静に手続きを進められます。
5-4.公証人とのやり取りをスムーズに進められる
公正証書を作成する際には、公証人による内容確認が行われます。内容に不備があると、修正や差し戻しが生じ、手続が長引くこともあります。
弁護士が事前に内容を整えておけば、公証人のチェックも通りやすくスムーズに進められ、早期解決に近づくでしょう。
5-5.感情的な対立を最小限に抑えやすい
当事者同士で話し合いを進めると、どうしても感情が先立ち、条件面の協議が難航しがちです。
第三者である弁護士が間に入ることで、話し合いは事務的・法的な整理に集中しやすくなります。結果として、無用な対立を避け、早期解決につながりやすいでしょう。
さいごに
示談書や公正証書は、不倫問題を法的に整理し、将来のトラブルを防ぐための重要な手段です。
ただし、一度締結すると原則として撤回できず、書き方次第で結果が大きく変わる点には注意が必要でしょう。
特に、不倫慰謝料の回収を確実にしたい場合や、相手と直接やり取りをしたくない場合には、早い段階で弁護士に相談することが安心につながります。
ご自身の状況に合った方法を選ぶためにも、迷ったときは専門家のアドバイスを受けることを検討してみてください。
弊所では、ご依頼前のご相談は無料で承ります。お悩みの方は是非、お気軽にご相談ください。
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