不倫相手への貸金は返還請求できる?示談交渉の注意点と解決策
不倫相手にお金を貸したものの、なかなか返してもらえずに悩むケースは少なくありません。
相手に催促したくても、関係がこじれて家族や職場に知られる事態になるのは避けたいと
考える人も多いでしょう。
本来、貸したお金は返してもらう権利があると言えますが、不倫関係が背景にあると
法的なハードルが上がる可能性が高いのも事実です。
特に不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されているような複雑な状況であれば、
なおさら慎重な対応が求められます。
安易に示談に応じると、貸したお金を取り戻す権利まで失いかねません。
当記事では、不倫相手との貸金トラブルに関して、返済を求めるための条件や
示談交渉で注意すべきリスクについて詳しく解説します。
目次
1. 不倫相手への貸金は返還請求できる?
交際関係にある相手へ渡したお金であっても、返す約束のもとに渡したのであれば
返還を求める権利があると言えるでしょう。
民法第587条で定められた金銭消費貸借契約にあたるため、
相手が誰であっても法的に返済の義務が生じると考えられます。
【民法第587条】
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
2. 不倫相手に返還請求する際に必要なものとは
相手に法的な手続きを含めた返済を求める場合、いくつか揃えておくべき情報や資料が存在します。
2-1. 貸し借りを証明する客観的な証拠
もっとも重要になるのが、お金を貸した事実と、相手が返す約束をした事実を裏付ける証拠です。
口約束だけでは反論された際に不利になる可能性が高いため、以下のような目に見える記録が必要になってきます。
・借用書
・銀行の振込履歴
・返済について言及しているメールやLINEのやり取り
・通話の録音データ
2-2. 相手の正確な氏名や連絡先
交渉や法的手続きを進めるには、不倫相手の基本情報が不可欠です。
本名や現在の住所、電話番号、勤務先などを把握しておくことが求められます。
不倫相手の場合、相手の素性を正確に知らないケースも少なくないため、改めて確認しておくことが必要です。
2-3. 返済期限や金額の明確な認識
いつまでに、いくら返す約束だったのかという条件を明確にしておくことも重要なポイントになります。
毎月分割で返す約束だったのか、ある時期に一括で返す約束だったのかによって、請求のタイミングや方法が変わってくる可能性があるからです。
3. 返還請求が難しくなる3つのケース
相手への請求を検討する際、状況によっては回収へのハードルが高くなる要素も存在します。
3-1. 「借りたのではなく貰った」と主張されるケース
明確な借用書を作っていない場合、相手が贈与されたものだと主張してくる事態が考えられます。
口約束だけでは、貸し借りの事実を客観的に示すのが難しくなる可能性が高いと言えます。
とはいえ、現時点で証拠がない場合でも諦めるのは早いです。今からでもメッセージアプリなどで返済について触れ、不倫相手からお金を返す意思を引き出すことで、新たな証拠を確保できる可能性があります。
3-2. 不法原因給付とみなされるケース
お金を渡した目的が公序良俗に反すると判断されると、法的に返還を求める権利がありません。
これを不法原因給付と呼び、民法第708条で定められています。
同条文では、「不法な原因のために給付をした者は、その返還を請求できない」と規定されているのです。
たとえば、不倫関係を維持するためにお金を渡したり、関係を隠すための口止め料として貸したりした場合、
「不法な原因」に該当して法律の保護を受けられない可能性があります。
【民法第708条】
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
ただし、不倫相手に貸したお金の全てがこれに当てはまるわけではありません。
純粋に相手の生活費を助ける目的であったり、事業資金として貸したような状況であれば、
通常の貸し借りと認められる場合もあります。
不倫相手側から「不法原因給付だから返す義務はない」と主張されたとしても、すぐには諦めず、
弁護士へ相談してみてください。
不倫相手への不法原因給付が認められた実際の裁判例
【大阪地裁平成24年4月24日判決】
① 事案の概要
原告(既婚男性)が、不倫相手の被告女性に対し、約12年間にわたり計105回、総額4,600万円を
超える金員を交付しました。
原告は「マンション購入資金や生活費としての貸付である」と主張し、被告側は「不倫関係を維持するための給付であり、不法原因給付にあたるため返還義務はない」と主張して争われた事案です。
② 裁判所の判断:請求額の2分の1の返還を認容
裁判所は、不倫関係維持という不純な動機(不法原因給付)を認めつつも、被告側の背信性を重く見て、請求額の半分である1,544万5,000円の支払いを命じました。
・貸付合意の認定 : 数多くの領収証や覚書に被告の自署があり、内容も具体的であったことから、贈与ではなく「返還の合意(貸し借り)」があったと認定されました。
・不法性の比較(信義則) : 貸し借りの動機に不倫関係の維持があったとしても、被告が「マンションの権利証を渡す」「優先的に返済する」といった虚偽の約束(詐術的な手段)を繰り返し、原告から金員を引き出していた点を重視しました。
・不法原因給付の制限:「不法原因給付だから1円も返さない」のは、騙した側の被告を利することになり不公平です。
一方で、「全額返せ」とするのも、不倫関係を維持しようとした原告の責任を無視することになります。
そこで裁判所は、信義則(公平の精神)に照らし、請求額の2分の1に限って返還を認めるという判断を下しました。
3-3. 客観的な証拠が足りないケース
現金で手渡しをして領収書や借用書もないような状態だと、お金を渡した事実自体を証明できなくなるリスクが高まります。
第三者が見てわかる記録がないと、法的な請求は困難になりがちです。
4. 不倫相手の配偶者から慰謝料請求されたらどうする?
不倫相手に貸しているお金がある一方で、不倫相手の配偶者から慰謝料を請求された場合、まずは頭の中を整理して一つずつ対応していくことが大切です。
特に不倫相手にお金がないケースでは、感情的な対立を避ける視点も求められます。
4-1. 不倫相手への貸金と配偶者への慰謝料は別物
法律上、不倫相手に貸した金銭の「返還請求権」と、不倫相手の配偶者が請求している「不貞慰謝料」は、
全く別の問題として扱われます。そのため、不倫相手の配偶者に対して「不倫相手に貸しているお金があるから、
その分を差し引いてほしい」と主張しても、法的に当然に認められるわけではありません。
まずは、それぞれの金額が妥当であるか、証拠が揃っているかを個別に確認していく必要があります。
4-2. 不倫相手に支払い能力がない場合のリスクを考える
不倫相手が家計を配偶者に握られているなど、支払い能力が乏しい状況では、無理に返済を迫ることで事態が悪化する懸念があります。
不倫相手が追い詰められた結果、こちらが不利になる証言をしたり、金銭トラブルをすべて「贈与(もらったもの)」と主張し始めたりする可能性も否定できません。
不倫相手の経済状況を見極めながら、回収のタイミングや方法を慎重に検討することが重要でしょう。
4-3. 不倫相手と直接連絡を取るリスクを考える
貸したお金を取り戻したいという思いから、不倫相手に直接連絡を取り続けることは避けることが望ましいでしょう。例え正当な理由の連絡であったとしても、不倫関係を継続しているとみなされる可能性が高いです。
特に、不倫相手の配偶者が弁護士を立てている場合、直接のやり取りは慰謝料の増額要因になったり、示談交渉において不利に働いたりする恐れがあります。貸金の回収については、自身の身を守るためにも、法的な窓口を通して冷静に進めることが賢明でしょう。
5. 慰謝料の交渉における貸金回収の注意点
不倫相手の配偶者との間で慰謝料の示談を進める際には、不倫相手への貸金返還についても慎重に検討する必要があります。
安易に慰謝料の示談書に署名してしまうと、不倫相手から貸金を取り戻す権利を失ってしまう恐れがあるためです。
5-1. 接触禁止条項による貸金回収への影響
不倫問題の示談では、多くの場合「接触禁止条項」が盛り込まれます。
これは、示談成立後に不倫相手と一切の連絡や接触を断つことを約束するものです。
一度この条項に合意してしまうと、貸しているお金を返してもらうための督促であっても、接触そのものが違約金の対象となるリスクが生じます。
返済が完了していない状態でこの条件を受け入れると、将来的な回収が極めて困難になる可能性が高いです。
そのため、例外の条件を付けてもらう等、条項の文言を工夫する必要があります。
自己判断は難しいため、弁護士に相談し、今後のトラブルを未然に防ぐことが望ましいです。
5-2. 清算条項の範囲を確認する
示談書に含まれる「清算条項」にも注意が必要です。
これは、示談書に記載された内容以外には、当事者間に債権債務がないことを互いに確認する文言を指します。
何も対策をせずに清算条項に合意してしまうと、不倫相手に対する貸金返還請求権まで消滅したと解釈される危険性があります。
貸金が残っている場合は、清算条項の対象から貸金債権を除外するなど、文言の調整を検討することが重要になるでしょう。
5-3. 三者間での合意を目指す解決策
状況によっては、あなたと不倫相手、そしてその配偶者の三者間で解決を図る方法も考えられます。
例えば、あなたが不倫相手の配偶者に支払うべき慰謝料の額を、不倫相手があなたに返すべき金額と相殺するような形で調整し、最終的な支払い額を抑えるといった手法です。
こうした複雑な調整は、不倫相手の協力も不可欠になるため、専門家を介して法的な整合性を保ちながら進めるのが現実的と言えるでしょう。
6. まとめ:複雑な貸金と慰謝料の問題は弁護士へ相談を
不倫相手への貸金トラブルは、単なる金銭の貸し借りに留まらず、不倫相手の配偶者からの慰謝料請求や、示談後の接触禁止リスクなど、複雑な問題が絡み合う傾向にあります。
自分一人で解決しようとすると、法的な権利を失ったり、さらに不利な状況に追い込まれたりする恐れがあるため注意が必要です。
6-1. 法的な視点での総合的な解決
弁護士に相談することで、貸金の返還請求だけでなく、慰謝料の減額交渉についても同時に進めることができます。
特に「不法原因給付」の該当性や、示談書の適切な文言調整などは、専門的な知識が不可欠な領域と言えるでしょう。
各問題の優先順位を整理し、法的な根拠に基づいて交渉を行うことで、より有利な条件での解決が期待できるようになります。
6-2. 精神的な負担とリスクの軽減
代理人として弁護士が交渉の間に入ることで、不倫相手やその配偶者、あるいは相手方の弁護士と直接やり取りをする精神的なストレスを大幅に軽減できます。
また、感情的な対立や、強引な示談を迫られるといったリスクを抑え、冷静に事態を収拾できる可能性が高まります。
不倫相手に貸したお金の回収を諦めたくない、あるいは高額な慰謝料請求に困惑している場合は、まずは一度専門家の意見を聞いてみることをお勧めします。
周囲に知られず、平穏な生活を取り戻すための第一歩となるでしょう。
弁護士法人ジェネシスは無料で相談を承っていますので、是非一度お問い合わせください。
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