不倫慰謝料請求で裁判をする方法|流れ・証拠・慰謝料相場を詳しく解説
配偶者の不倫が発覚した場合、「不倫相手に慰謝料を請求したい」「裁判を起こして責任を取らせたい」と考えるのは自然です。
しかし、実際に裁判を起こすとなると、どのような手続きを踏めばよいのか分からず、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
不倫による慰謝料請求は、法律上は「不貞行為による不法行為」として扱われ、精神的苦痛に対する損害賠償を請求することができます。
もっとも、裁判手続きには一定の準備が必要であり、証拠の有無や請求方法によって結果が大きく左右されることもあります。
この記事では、不倫慰謝料の裁判を起こす方法について、裁判の基本的な仕組み、裁判前に行うべき準備、裁判手続きの流れなどを弁護士の視点から分かりやすく解説します。不倫慰謝料請求を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1 不倫慰謝料の裁判はどのように起こす?まず知っておきたい基本
1-1 不倫慰謝料請求とは何か
不倫慰謝料請求とは、配偶者の不貞行為によって精神的苦痛を受けた配偶者が、その損害の賠償を求める手続きです。
法律上、既婚者が配偶者以外の者と自由な意思に基づいて性的関係を持つことは「不貞行為」と呼ばれ、婚姻関係を侵害する行為とされています。
このような行為によって精神的苦痛を受けた場合には、民法上の不法行為として慰謝料請求を行うことが認められる可能性があります。
【民法第709条】
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
慰謝料請求は、不倫をした配偶者だけでなく、不倫相手に対しても行うことができます。
特に、不倫相手が相手方の婚姻関係を知りながら交際していた場合には、不法行為責任が認められる可能性が高くなります。
もっとも、不倫があったからといって必ず慰謝料請求が認められるわけではありません。
婚姻関係の状況や不倫の態様など、個別の事情を踏まえて判断されることになります。
1-2 不倫慰謝料を請求できるケース
不倫慰謝料請求が認められるためには、いくつかの条件を満たしている必要があります。
一般的には、次のような事情が重要とされています。
・配偶者と不倫相手との間に不貞行為(肉体関係)があったこと
・当時、夫婦関係が破綻していなかったこと
・不倫相手に故意または過失があること
例えば、不倫が行われた時点ですでに夫婦関係が破綻していた場合には、不倫によって新たに精神的苦痛が生じたとはいえず、慰謝料請求が認められない可能性があります。
また、不倫相手が既婚者であることを全く知らなかった場合には、責任が否定されるケースもあります。
このように、不倫慰謝料請求が認められるかどうかは、個別の事情によって判断されるため、具体的な状況に応じて慎重に検討することが必要です。
1-3 裁判を起こす前に知っておくべきポイント
不倫慰謝料請求は、必ず裁判で解決しなければならないわけではありません。
実際には、裁判に至る前に話し合いによって解決するケースも多く見られます。
裁判は、一定の時間や費用がかかる手続きであり、精神的な負担も小さくありません。
そのため、まずは相手方に対して示談を前提に慰謝料請求を行い、話し合いにより解決できないかを検討するのが一般的です。
もっとも、相手方が慰謝料の支払いを拒否している場合や、話し合い自体に応じない場合には、裁判による解決を検討することになります。 裁判を起こす場合には、証拠の整理や請求内容の検討など、事前に準備を整えておくことが重要です。
2 不倫慰謝料の裁判はすぐ起こすべき?多くの場合は示談交渉から始まる
2-1 不倫慰謝料請求の一般的な流れ
不倫慰謝料請求は、次のような流れで進むことが多いです。
まず、不倫の事実を裏付ける証拠を収集し、そのうえで不倫相手や配偶者に対して慰謝料請求を行います。多くの場合は、この段階で話し合いによる解決が試みられます。
示談交渉によって慰謝料の金額や支払方法について合意が成立すれば、その内容を合意書として書面にまとめることで問題は解決します。
これが「示談」となります。
しかし、相手が請求を無視してきた場合や、慰謝料の支払いを拒否している場合、金額について折り合いがつかない場合には、最終的な解決手段として裁判に進んでいくことになるでしょう。
2-2 示談交渉とは何か
示談交渉とは、裁判を行わずに当事者同士の話し合いによって問題を解決する方法です。
示談が成立した場合には、慰謝料の金額や支払方法、支払期限などを合意書として書面にまとめ、当事者が記名押印を行います。
合意書を交わすことで、誰が、何のために、いつ、いくらを支払うのか明確になり、後のトラブルを防ぐことができます。
示談交渉は裁判に比べて柔軟な解決が可能であり、解決までの期間も比較的短く済むことが多いというメリットがあります。
そのため、不倫慰謝料請求では、まず示談交渉による解決を試みるケースが多く見られます。
3 不倫慰謝料裁判を起こす前に必要な準備
不倫慰謝料の裁判を起こすためには、事前にいくつかの準備を行っておく必要があります。
裁判では、請求の根拠となる事実や証拠をもとに審理が進められるため、十分な準備をしておくことが重要です。
特に、不倫の証拠の整理や相手方の情報の特定、慰謝料請求の意思表示などは、裁判を適切に進めるうえで重要なポイントとなります。
ここでは、不倫慰謝料裁判を起こす前に確認しておきたい主な準備について解説します。
3-1 不倫の証拠を集める
不倫慰謝料請求において最も重要となるのが、不貞行為を裏付ける証拠です。
裁判では、単なる疑いだけでは慰謝料請求は認められません。客観的な証拠を用意することが必要になります。
証拠として有効なものの例を紹介します。
・ホテルに出入りする写真や動画
・不倫関係を示すLINEやメールのやり取り(肉体関係がわかるもの)
・当事者の自白や録音
・探偵事務所による調査報告書
証拠の内容や量によっては、裁判の結果に大きな影響を与えることがあります。
そのため、請求を検討している段階で証拠を整理しておくことが重要です。
ひとつでは不十分でも、複数集めることで有効になる証拠もあるため、請求前に弁護士に証拠の有効性について相談するのがベストです。
3-2 不倫相手の情報(氏名・住所など)を特定する
裁判を起こすためには、不倫相手の氏名や住所などの情報が必要になります。
裁判所は、訴状を被告に送達することによって裁判手続きを開始するため、相手方の住所が分からない場合には手続きは難しいのが現状です。
相手の住所が分からない場合には、携帯電話番号や車のナンバーから弁護士が調査を行うことで判明する場合もあります。判明している情報によっては、住民票や戸籍などの資料を取得して調査を進めることもあります。
今ある情報で慰謝料請求が可能なのか心配な場合は、一度弁護士に確認してみるのが確実です。
3-3 慰謝料請求の意思を伝える(内容証明郵便など)
裁判に進む前の段階として、内容証明郵便を利用して慰謝料請求を行うことがあります。
内容証明郵便とは、いつ・誰が・どのような内容の通知を送ったのかを郵便局が証明する制度です。
正式な請求を行ったことを明確にすることができるため、後日の紛争防止にも役立ちます。
内容証明郵便を送付することで、相手方が請求に応じる場合もあり、その場合には示談交渉のみで解決できる可能性もあります。
4 不倫慰謝料裁判のやり方と手続きの流れ
不倫慰謝料請求の裁判を行う場合、いきなり相手方を法廷に呼び出して結論が出るわけではありません。
実際には、訴状の提出から始まり、相手方の反論、証拠の提出、争点の整理などを段階的に進めながら、最終的に和解または判決によって解決を図ることになります。
また、不倫慰謝料請求の裁判では、不貞行為の有無だけでなく、婚姻関係の状況や精神的苦痛の程度、相当な慰謝料額なども問題となることがあります。
そのため、裁判の全体像をあらかじめ理解しておくことは、見通しを持って対応するうえで重要です。
ここでは、不倫慰謝料裁判の一般的な流れについて解説します。
4-1 訴状を裁判所に提出する
不倫慰謝料請求の裁判を始めるためには、まず裁判所に訴状を提出する必要があります。
訴状とは、原告が被告に対してどのような請求を行うのか、その請求の理由はなんなのかを記載した書面です。
不倫慰謝料請求の場合には、不貞行為があったこと、原告が精神的苦痛を受けたこと、請求する慰謝料の金額などを記載することになります。
訴状には、請求の趣旨と請求の原因を整理して記載する必要があり、単に「不倫をされたので慰謝料を払ってほしい」と書くだけでは足りません。どのような事情のもとで不貞行為があったのか、どのような証拠に基づいて請求するのかをできる限り明確にしておくことが重要です。
また、訴状の提出先は、原則として相手方の住所地を管轄する裁判所となります。訴状が受理されると、裁判所から相手方に訴状が送達され、正式に裁判手続きが始まります。
4-2 第1回口頭弁論
訴状が相手方に送達されると、裁判所は第1回口頭弁論の期日を指定します。
第1回口頭弁論は、裁判の最初の正式な期日であり、原告と被告の主張を確認し、今後の進行を整理するための重要な場面です。
第1回口頭弁論そのものは、長時間にわたるものではなく、提出済みの書面を確認して短時間で終了することも少なくありません。
しかし、この段階で被告が請求を争う姿勢を示した場合には、その後さらに主張や証拠のやり取りが続いていくことになります。
したがって、第1回口頭弁論は短い手続きであっても、今後の裁判の方向性を把握するうえで重要な意味を持ちます。
4-3 争点整理・証拠調べ
第1回口頭弁論の後は、裁判所の進行のもとで争点整理が行われます。
争点整理とは、当事者双方の言い分を踏まえて、どの点に争いがあるのかを明確にしていく作業です。
不倫慰謝料請求の裁判では、不貞行為があったかどうか、不倫相手に故意または過失があったか、婚姻関係が破綻していなかったか、慰謝料額はいくらが相当かといった点が争点になりやすいといえます。
この段階では、原告・被告の双方が準備書面を提出し、自分の主張を補足していきます。
また、その主張を裏付ける証拠も順次提出されます。
どの証拠がどの事実を裏付けるのかを整理しながら提出することが重要です。
さらに、書面や資料だけでは判断が難しい場合には、当事者本人や関係者に対する尋問が行われることもあります。尋問では、裁判官や相手方代理人から質問を受けることになるため、事前に争点を整理し、自分の立場を一貫して説明できるよう準備しておく必要があります。
裁判の中でも特に重要な過程であり、ここでの主張立証の内容が結論に大きく影響します。
4-4 和解または判決
裁判が進行すると、裁判所から和解の可能性について打診されることがあります。
不倫慰謝料請求の裁判では、必ずしも最後まで判決に進むとは限らず、途中で和解によって解決するケースも少なくありません。
和解とは、当事者双方が一定の条件で合意し、その内容を裁判上で確定させる方法です。
和解のメリットは、判決を待たずに早期解決が図れる点にあります。
例えば、慰謝料の金額や支払方法、支払期限などについて双方が歩み寄ることで、時間的・精神的負担を抑えながら解決できる場合があります。
また、判決のように白黒が明確に出るわけではなくても、現実的な着地点を見つけやすいという利点もあります。
一方で、和解が成立しない場合には、最終的に裁判所が判決を下すことになります。
判決では、不貞行為の有無や不倫相手の責任、慰謝料の金額などについて裁判所が判断を示します。
判決が確定すれば、相手方にはその内容に従う義務が生じ、支払いがされない場合には強制執行を検討することも可能になります。
もっとも、判決まで進む場合には解決までに時間を要することもあるため、事案によっては和解と判決のいずれが適切かを見極めながら進めることが重要です。
5 不倫慰謝料の相場はいくら?裁判で認められる金額の目安
不倫慰謝料の金額は、法律で一律の基準が定められているわけではありません。
慰謝料は、個別の事情を踏まえて裁判所が判断するものであり、不倫の態様や婚姻関係の状況などを総合的に考慮して決定されます。
そのため、同じ不倫の事案であっても、具体的な事情によって慰謝料額が大きく変わることがあります。
もっとも、過去の裁判例をみると、おおよその目安となる金額の傾向があります。一般的には、離婚に至った場合には比較的高額になり、離婚に至らない場合にはそれよりも低い金額になることが多いとされています。
例えば、裁判例では次のような金額が一つの目安とされています。
【離婚した場合】
150万円〜300万円程度
【離婚しない場合】
50万円〜150万円程度
もっとも、これらの金額はあくまで一般的な傾向にすぎません。
例えば、不倫が長期間にわたって継続していた場合や、夫婦関係に重大な影響を与えた場合には、慰謝料が比較的高額になることがあります。
一方で、不倫関係が短期間であった場合や、夫婦関係への影響が限定的であった場合には、慰謝料額が比較的低くなることもあります。
裁判所は提出された証拠や事情を踏まえて、相当と考えられる金額を判断するのです。
6 不倫慰謝料の裁判をするメリット・デメリット
不倫慰謝料請求は、話し合いによる解決が難しい場合に裁判によって解決を図ることができます。
裁判には一定のメリットがある一方で、時間や費用の面での負担が生じることもあります。そのため、裁判を選択するかどうかは、それぞれの事情を踏まえて慎重に検討することが重要です。
ここでは、不倫慰謝料裁判を行う場合の主なメリットとデメリットについて説明します。
6-1 裁判をした場合に得られるメリット
主なメリットは下記2点です。
・相手が支払いに応じない場合でも請求できる
・裁判所(第三者)の判断で責任を明確にできる
例えば、不倫相手が慰謝料の支払いを拒否している場合や、交渉に応じない場合、明らかに低額な金額しか提示してこない場合等には、話し合いでは解決が難しいことがあります。
そのような場合でも、裁判を提起すれば、提出された証拠や主張をもとに最終的に裁判所が判断を下すため、不倫の責任や慰謝料の金額について第三者の判断が示されることになります。当事者同士の主張が対立している場合でも、裁判所の判断によって問題を整理することができる点は大きなメリットといえます。
さらに、判決が確定した場合には、相手が慰謝料を支払わない場合でも、強制執行という手続きによって回収を図ることが可能となります。
例えば、相手の給与などを差し押さえることによって、未払いの慰謝料の回収を実現できる可能性があります。このように、裁判には法的な強制力を伴う解決手段であるという特徴があります。
6-2 裁判にすると起こりうるデメリット
一方で、裁判には一定の負担が生じる可能性がある点にも注意が必要です。
・時間と費用がかかる
・不倫の事実が公開の場で争われる可能性がある
裁判は、訴状の提出から判決まで一定の期間を要することが一般的です。
解決までには早くても数か月、中には1年以上かかるケースもあります。その間、書面の作成や期日への対応などが必要となるため、精神的な負担を感じる方も少なくありません。
また、裁判は提訴するだけでも、数万円程度の費用がかかってきます。
さらに、裁判では当事者双方が主張や証拠を提出して争うことになるため、不倫の事実や夫婦関係の状況などが法廷で問題となる場合があります。特に、不倫の経緯や交際状況などについて具体的な説明が求められることもあり、その点を負担に感じる方もいます。
書面の作成や期日対応等は不貞慰謝料裁判を得意とする弁護士に任せることで、負担を大幅に減らすことができます。よって、弁護士に依頼したうえで裁判を行えば、解消できるデメリットもあるため、裁判の負担が心配な場合は、まずは弁護士にどのようなことを任せられるのか聞いてみるのもおすすめです。
7 不倫慰謝料裁判を弁護士に依頼したほうが良い理由
不倫慰謝料の裁判は、必ずしも弁護士に依頼しなければならないわけではなく、本人が手続きを行うことも可能です。これを「本人訴訟」といいます。
しかし、裁判では法律的な主張や証拠の整理が重要となるため、専門的な知識が求められる場面も少なくありません。
例えば、不貞行為の有無をどのように主張立証するのか、どの証拠をどのように裁判所へ提出するのか、慰謝料額としてどの程度が相当なのかといった点については、法律的な観点から整理する必要があります。これらの対応が不十分な場合、本来認められる可能性のあった慰謝料額が十分に認められない可能性もあります。
また、裁判では訴状や準備書面などの書面を作成する必要があり、手続きの進行に応じて適切に主張を補充していくことが求められます。相手方が弁護士に依頼している場合には、専門的な主張に対して適切に対応することが難しい場面も出てくるでしょう。
弁護士に依頼することで、証拠の整理や請求内容の検討、書面作成、裁判手続きへの対応などを任せることができ、法的な観点から適切に対応することが可能になります。
また、示談交渉の段階から弁護士が関与することで、裁判に至る前に解決できる可能性が高まることもあります。
不倫慰謝料請求は、証拠の有無や請求方法によって結果が大きく変わることがあります。
裁判を検討している場合には、早い段階で弁護士に相談することで、今後の進め方について具体的な見通しを立てることができるでしょう。
まとめ
不倫慰謝料の裁判は、訴状の提出から口頭弁論、証拠調べ、和解または判決という流れで進みます。
しかし、実務上は裁判の前に示談交渉が行われることが多く、話し合いによって解決するケースも多くあります。
不倫慰謝料請求では、不貞行為を裏付ける証拠の有無や請求方法、主張の整理などによって結果が大きく左右されることが一般的であり、裁判手続きには一定の時間と労力がかかることを含め、どのような方法で解決を目指すのかを慎重に検討することが重要です。
不倫慰謝料請求を検討している場合には、証拠の状況や請求の方法、見込まれる慰謝料額などについて専門家の意見を確認しておくことが安心につながります。
早い段階で弁護士に相談することで、示談交渉から裁判までを見据えた適切な対応を検討することができるでしょう。
不倫慰謝料の請求方法や裁判手続きについてお悩みの方は、まずは弁護士へ相談し、具体的な状況に応じたアドバイスを受けることをおすすめします。
初回相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
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